ビットコインとNYダウの相関性は、ある!?ない!?
ビットコインの動きとNYダウの動きに関して「相関性」があるのか?という議論はとても難しい問題です。実際の動きを見てみると、正の相関性があるケースと負の相関となるケースがあり、一概に「相関関係がある!」「相関関係はない!」と言い切れないのが事実です。そもそもビットコインとNYダウは異なる金融商品(指数)であるため、その独自の要因で動くことから全く同じ動き、もしくは完全に逆の動きとなることはあり得ません。しかし、詳しく調査してみると意外な関係性が見えてくるのもまた事実です。
今回は、ビットコインとNYダウの相関性についてご案内させていただきます。
ビットコインとNYダウの関係
ビットコインは、ご存知の通りインターネット上の暗号資産です。一方、NYダウはアメリカ・ニューヨークの株式市場で取引されている企業の株価の動きを示す指数の1つです。暗号資産と株式、これらは一見全く異なるものに見えますが、投資家にとってみれば投資対象の1つであり、多くの投資家に利用されています。
ビットコインとNYダウの「相関性」とは何でしょうか?
相関性とは、あるものが動くともう1つのものも同じ方向に動く関係性を指します。例えば、気温が高くなるとアイスクリームの売上が上がります。これはアイスクリームの売上と気温には正の相関性がある、ということになります。逆に気温が高くなると肉まんの売上が下がります。これは肉まんの売上と気温は負の相関性がある、ということになります。
ビットコインとNYダウの負の相関性
ビットコインはその特徴の1つに発行枚数が決まっているという点があります。ビットコインは2100万枚が発行上限となっており、それがビットコインの価値を担保している要因の一つとなっています。このようにビットコインの発行枚数が決まっている希少性が産出量の決まっている金と類似している、ということでビットコインは「デジタルゴールド」とも呼ばれています。
金はいわゆる「安全資産」と呼ばれるもので、金融危機や大規模な経済的な不安が生じた場合、投資家はリスク資産から安全資産へと資金を移動させる傾向があります。その際、ビットコインが「安全資産」として買われる一方、NYダウなどは売られるという負の相関がみられることがあります。
ビットコインの「安全資産」としての可能性が指摘されたのは2010年から2015年にかけて発生したギリシャの財政危機問題の時です。ギリシャ政府は巨額の債務返済に苦しみ、ユーロ圏諸国との間で激しい交渉が繰り広げられ、世界中の金融市場に大きな影響を与えました。
この時、ビットコインは伝統的な金融システムとは独立しており、国家の財政状況や金融政策の影響を受けにくいとされています。そのため、ギリシャ危機のような伝統的な金融市場の不安定な状況下では、ビットコインは安全な資産としての役割を果たす可能性があるのではないか、といった見方が広がりました。
現にギリシャ危機の最中、一部の投資家や市民は自国の通貨や銀行システムに対する不信感からビットコインを選好しました。特にギリシャ国内では、銀行の預金引き出し制限が実施される中でビットコインを通じた資産の保護や国際送金手段としての利用が増えました。
その他の例として2020年、新型コロナウイルスが世界中に拡散した時のことを上げることもできます。多くの国でロックダウンが実施され、世界経済が甚大な影響を受けたことで金融市場も大きく揺れ動きました。その際も「安全資産」としてのビットコインが買われるといった場面がありました。
このように、世界経済が動揺した際に「リスク資産」であるNYダウが売られる一方、「安全資産」であるビットコインが買われるということが起こることがあるわけです。
ビットコインとNYダウの正の相関性
しかし、現在はビットコインとNYダウの相関について、正の相関であるという見方が広がっています。これはビットコインが金融商品の1つとしての認識が高まったことで「安全資産」としての性質が低下している事が要因として考えられています。また、ビットコインの価格の変動は比較的大きい傾向があり、リスクの高い投機的な資産であることも事実です。これも「リスク資産」としての認識を高めている要因となっています。
例えば世界的な経済が好調な時、企業の業績も上がりNYダウも上昇します。同時に、投資家はリスクを取る余裕ができ、ビットコインなどのリスクのある資産にも手を出しやすくなります。結果、ビットコインの価格も上昇します。
逆に世界的な経済が不調な時、企業の業績も下がりNYダウは下落します。同時に、投資家はリスクを取る余裕がなくなり、ビットコインなどのリスクのある資産を手仕舞いする傾向が強まります。結果、ビットコインの価格は下落します。一般的に投資家は経済が不調となった場合は手元に現金を残す傾向があります。これは「リスク資産」の下落の影響を切り離すという意図とともに、次のチャンスの時に動きやすくするといった目的があります。「有事のドル買い」というのは、こういった株式等の「リスク資産」をドルへ換金するという背景があります。
例えば、2020年の後半から2021年にかけての動きになりますが、当時はコロナショックによる大きな下落の後、NYダウはV字回復を遂げた時期にあたります。2021年にNYダウは新たな最高値を更新しました。これは、アメリカ合衆国におけるコロナウイルスワクチンの接種が進み、経済活動が徐々に正常化していったこと、そしてアメリカ政府による大規模な経済刺激策が投じられたことによります。これらの要因が、企業の業績回復を見込んだ投資家たちにポジティブなシグナルを送り、NYダウが最高値を更新するに至りました。
当時、ビットコインは、インフレヘッジとしての役割や、新しい資産クラスとしての注目度が高まっていました。そして、コロナウイルスに対するワクチンの普及や経済刺激策によるリスクアセットへの資金流入、そしてテクノロジーへの投資が増加したことなどで価格が押し上げられました。また、ビットコインが主流の投資アセットとして認識されるようになり、企業や機関投資家による購入などが増加しました。このような状況を背景にビットコインとNYダウは正の相関があるといった見方が広がることになりました。
ビットコインとNYダウの相関性とは – まとめ
ビットコインとNYダウの相関は現状においては正の相関にあるという見方が優勢となっています。実際に過去の両者の相関関係を分析すると、正の相関性が認められる場面が多くなっています。
- 2014年からのビットコインとNYダウの相関:+1が完全な正の相関、-1が完全な負の相関、0が相関無し
しかし、上記のグラフを見ると-1に近付いている場面も存在します。ビットコイン・NYダウともに独自の要因で動くものであることや、投資家の考え方や反応も多種多様であることなどが要因として考えられます。しかし、傾向としてビットコインとNYダウが正の相関となることが多いということを知っておくことは投資をする上で参考となるでしょう。投資において絶対はありませんが、傾向を掴むことはすべてにおいて有用であることは間違いないでしょう。